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zoom RSS 武藤章・軍務局長の部下あつかい

<<   作成日時 : 2010/03/21 10:36   >>

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武藤章・軍務局長(少将〜中将時代)は、どのように部下に接していたのでしょうか?


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武藤さんが軍務局長に着任した時の挨拶の中に

私は時に暴言を吐きます

だがしかし他意があるわけではないので覚悟してもらいたい


といったのだそうな。

「陸軍省軍務局」とはどのような部署でしょうか?

武藤さんに言わせると

「(軍務局)軍事課の仕事が編制、制度、予算、渉外事項など、

陸軍省業務の中枢に触れるものばかりである関係上、

課員は一粒選りの優秀者揃いであり

頭脳明晰理路整然どっちかというと理性のかった人々の集まりである

したがって、当時青年将校たちの間に横行するような、感情的に血を燃やす思想や運動には冷静な批判を加える

態度をとっていた・・・」
(武藤さんが中佐のころの軍事課高級課員時代を省みての記述)

よって、高宮太平・元朝日新聞記者が『昭和の将帥』で書いているように

昭和の将帥 (1973年)
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軍事課員は一癖も、二癖もある。

腕に覚えのある侍どもだ。

大臣がかわろうが局長が動こうが、俺は俺の道をいくという構えでジタバタするものはない。

それぐらいの面魂は持っているのである・・・


このような部下たちを、武藤さんは軍務局長という立場でどう扱ったのか?


部下は非常に、手ごわい!

気の弱い上官、能力のない上官ならば、部下はどんどん増長してしまう。

それをどこで受け止めるかという大変さがあるようですね。

部下にしてみれば、
増長しているつもりはない!上官の決断力がないので、自分たちが仕事をせざるを得ないのだ!」

ということになるでしょうか?

武藤軍務局長の部下の一人に、

牧達夫(当時中佐)がいました。軍務課内政班長という立場でした。

この人は、お父さんが牧達之陸軍中将で、その一人息子のお坊ちゃんで頭が良く、
文章も上手いけれど、オッチョコチョイで口が軽いというところがあるらしいです。

(石井秋穂「石井秋穂の手記」『軍務局長武藤章回想録』所収)

たしかにこの人、陸軍大学校の「恩賜の軍刀組」卒業だ!



この牧達夫中佐とのエピソードをご紹介します。

昭和15(1940)年8月

ちょうど近衛文麿が「新体制運動」の先頭に立ったころのこと。

この「新体制運動」は、とりあえず左右両派の人たちが、
「日本の危機を打開しよう」と、普段の思想を超えて集ったものです。

ともすれば、いくらでも瓦解する危険性はある。

武藤軍務局長は、陸軍の事務的な代表としてこれを指導する立場にあったのです。

武藤軍務局長は、若いころマルクスの『資本論』を読み、

さらに文学にも親しむ一面があったせいか、左右両方と話ができるという能力がありました。
彼のもとには、転向左翼も出入りできるほどでした。


だからか、思想の違いを超えてなどという美名のもと、

とにかく寄せ集めの団結ではすぐに瓦解してしまうので、

何とか近衛文麿が新党を結成することを望んでいたということです。

むしろ、立憲民政党のような政党は、
政府、軍部に対する反対政党としてしっかりしてもらいたい、という気持ちがあり、

ナチスのような一国一党を望んだことはないのです

だからこそ、その民政党がヘナヘナと迎合してしまった時、

軍人やめて代議士になる」と

周囲にもらすほどだったとか。

この年の8月のある日、

牧達夫中佐と、企画院側補佐役の奥村喜和男(「革新官僚」として知られている)が

政治新体制推進体には、

党規確立の意味から軍法会議的な内部裁判機構を具備すること


を執拗に力説したときのこと、

牧達夫中佐の上官だった武藤軍務局長はどういう態度をとったのでしょうか?

本推進体がある程度同志的試練を経たものの

一元的結合体ならばいざ知らず、

当面呉越同舟の異種綜合をもって発足せざるをえない現況において、

もし野望をもつもの、排他的な独裁傾向の人によって、この裁判権が悪用されることは恐ろしい!

この両君(牧中佐・奥村)恐らく範をナチスに採ったであろう内部裁判機構には、
自分は絶対合意できない
!」

と断固反対を皆の前で表明しました。

それに対して、奥村氏が「両論対決!長官(村瀬法制局長官)決裁!決裁!」と叫びました。

そのとき武藤軍務局長は

何をいうか!両名(牧中佐・奥村)即刻退場!」と大喝し、


牧中佐に対しては「お前はおれの補佐役のはずだ!それが何ということだ!」

とさらに癇癪玉を炸裂させて、会議の場をしらけさせたそうです。

でも、私はこの新体制運動において

ナチスのような内部裁判機構がつくられるようなことにならなかったのは良かったと思います。

当時の空気では、それだけ切羽詰まった国際関係だったとしても・・・。

軍務局長のような立場の人は、ある時は自分の意志で、部下を抑えねばならない


しかし、この牧中佐は、まだ懲りずに武藤軍務局長に反抗しています。

武藤軍務局長が、政界のダラ幹(事なかれ主義的政治家)

とつきあっていることが気に入らないということで

意見を皆でいうことになっているとし、武藤軍務局長のブレーンであり友人でもある矢次一夫氏に

「今日、武藤軍務局長に対して、われわれ青年将校の有志が意見をいうことになっているので、
局長の友人ということで立ち会ってもらいたい」とお願いをしています。

矢次氏も「面白い」として承諾し、軍務局長室に向かいました。

武藤軍務局長の前で、牧中佐たちは直立不動の姿勢をとり

「閣下、われわれ青年将校として、本日申し入れたいことがあります。これから読みあげます。
一つ、武藤軍務局長は政界のダラ幹と組んで・・・」と言ったところ、

武藤局長は

馬鹿っ!貴様ら、下手な勧進帳の真似でもしとるのか!下がれっ!」と大喝。

牧中佐は気合負けして、挙手の礼をして逃げ出したらしい・・・。

さらに数カ月後、日米開戦前

「局長の行動がけしからんので、大いに文句をいうので立ち会ってください」

とまた矢次氏にお願いに行き、

矢次氏から「今度は逃げ出さないか?」と言われたとき、

「大丈夫です」と力んでいたらしいです。

ともに局長室に入ったところ、

武藤局長は目も赤いままで必死に書類と格闘しているのをやめて、

笑いながら「また牧が文句を言いに来たのか」と

戦争になったら大変だと思って、一生懸命交渉しているけれど、

上手くいかなくて、とうとう眠れなかった。

今日は頭も痛いし、目も痛い。けれど休めなくて・・・


といったところで、この牧中佐

局長、寝られないほど苦労しているんですかぁーーーーー

すみません。・゜・(/Д`)・゜・。うわぁぁぁぁん


と突然泣き出して出て行ってしまったらしい。

何だか「男の大奥」だなあと思いました。そして、熱い!部下も上官も。

軍だから厳しい秩序はあるにせよ、
その中で激しい意見具申のやりとりは日常茶飯だったのだなあと思いました。

武藤軍務局長も、石原莞爾作戦部長との激しいやり取りが知られてますが、

彼自身が上官になった時、こんな「止め方」をしていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか?

何だか軍人さんって、個性ゆたかだなあと思います・・・。

厳しい訓練をはね返すぐらいの強さとしぶとさから出てくる豊かな個性のぶつかり合い。

よく、「意志の強さ」が大切とはいいますが、武藤さんぐらいの立場の方って、
本当に意志が強くないとやってられないなあと

その大変さの一端を見ることができました。

また、「軍部の独走」云々という人に対して一言・・・。

軍部を利用しようとしていた政治家・官僚も

ある意味、軍部以上に独走していた部分もあると思います・・・


最後に、武藤章中将は、部下の意見をとりあえず

受け止めた」上で

怒鳴る!という姿勢だったので、

部下としたら、とりあえず「話は聞いてくれる上官」と見ていたのではないか?

無視はしていないし、何らかの反応は示している・・・。

中々真似できないのではないでしょうか?

参考文献:

牧達夫「私と新体制運動 軍の期待と幻滅」(『中央公論 歴史と人物』1974年5月)

矢次一夫「陸軍軍務局の支配者」(『文藝春秋』32 1954年10月)

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